HKSマガジン
GT SUPERCHARGER SYSTEM For VELLFIRE・ALPHARD
自動車雑誌をはじめ、テレビ、Webサイト等で活躍中のバラエティ自動車ジャーナリスト、小沢コージ氏。新型車にいち早く試乗し、厳しくも愛のある独自の物言いでクルマを評価する。
そんな小沢コージ氏に、普段はあまり乗ることのないヴェルファイアの試乗を依頼。スーパーカーから軽自動車まであらゆるクルマを熟知した小沢コージ氏の評価はいかに!!

普段はより優しく頼りがいのある父に

 「男は強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない」。

 とはある探偵小説のベタな一節であるが、未だに男にとっての理想であり、永遠の目標を示していると不肖小沢は考える。優しさと強さ。スポーツセダンしかり、4人乗りスポーツカーしかり、我々男が選ぶクルマは、無意識的にこの二面性の両立が裏テーマになっているからだ。

 特に微妙なのがミニバンだ。3列シートで子供大人が6~8人乗れ、家族はもちろん友達がいても大丈夫。明らかに優しさ中心で、中には「優しさだけでしょ?」と言いたくなる人もいるかもしれないがチッチッチッ! それは大間違い。優しさだけでは満足できないからこそ、微妙にイカついフロントグリルを付けたり、走りのグレードを選んだりと大抵の父は“悪あがき”しているんじゃないか!

 中でもアルファード、ヴェルファイアのV6モデルを選ぶ男達の奥底には、諦めきれない想いがドロドロ渦巻いている。隠しても、小沢にはわかる。オレはもっともっと雄々しくありたい! 男らしくありたい!! と叫んでいるミニバンパパの心の声が。

 そこでオススメが、過給器チューンで有名なHKSが、そんな男達のために開発したイマドキのスーパーチャージャーキットだ。取り付けに手間が掛かるターボではなく、あえて排気系をイジらずに済むスーパーチャージャーを選択。おかげで排ガスのクリーンさは保たれる。その上騒音や振動を抑え、なおかつ年々狭くなるエンジンルームでもOKな「トラクションドライブメカニズム」付きの遠心式。これが侮るなかれ。280psの3.5リッターV6にポン付しただけで、30ps以上のパワーアップと10kg・m以上のトルクアップを果たすのだ。

 論より証拠、まずは日中リラックス気分の小沢は都内を走り出したが、とにかくピックアップの良さにビックリ。もともとトルク太めのV6モデルだが一枚上手だ。アクセルをスッと踏んだとたん、驚くべきレスポンスで極太トルクがスッと立ち上がり、ストレスフリー。絶対的パワーの問題じゃない。ボディが大きく重くダルめのフットワークになりがちなラージミニバンだが、これならコンパクトカー並み。しかも大人が6人、フル乗車した状態でも機動性は落ちないし、スーパーチャージャー特有のウィィ~ンという気になる作動音もほとんどない。

 あえてハチャメチャに飛ばしはしない。子供や家族がおしゃべりできる静かさとスピードを保ちつつ、それなりに走りを楽しむ。まさに頼れるパパのあるべき姿ではないか!

画面をクリックすると、ムービーの再生・停止が可能です。
狭いエンジンルームに見事に収まったGTスーパーチャージャーシステム。ボンネットを開けたときの満足度も高い。
アクセルを踏み込むと、ノーマルとは明らかに違うトルクが低回転から立ち上がる。クルマが軽くなったような印象だ。
大人6人が乗っても余裕の走りを実現。ピークパワー重視というよりは常用回転域の極太トルクで気持ちよく走れる。

気分はEXILE!夜は欲望を思いっきり開放せよ

 実はどんな男にも別の顔がある。どんなに大人しそうで、虫も殺さぬような顔をしていても男はどこかに欲望を内包している。だからいつかはその欲望を解き放たねばならない。そういう時にもクルマは非常に重要になってくるのだ。

 例えば昼間、子供とサッカーをしたその夜に、突如女性に呼び出されてドライブに行かなければならないこともある。そんなことホントにあるのか? と言われるかもしれないが・・・・ある。男とは本来そういうものだ。

 果たしてそういう時にアナタはチャイルドシート付きのヴィッツで出かけられるだろうか。否。結局、クルマの本当の実力はそういう時にこそ露わになるわけで、だからこそ、このHKS GTスーパーチャージャーシステム付きのヴェルファイアが存在する。

 そもそもヴェルファイア自体が、あのEXILEの如く、ファミリー性とワイルド性を両立させたミニバンだ。優しさと強さの融合は、今までにないレベルであり、だからこそ未だに根強い人気を誇っている。

 そしてこのHKS GTスーパーチャージャーシステムの本当の凄さは、本来のヴェルファイアの強さと優しさを少しも犠牲にせずに、その相反する魅力を伸ばしているところにある。

 街中でもわかったが静粛性と快適性は文句ナシ。昔、スーパーチャージャーと言えば耳障りなメカニカル音がつきものだったがほぼ皆無。さらにその真骨頂を発揮するのは高速域、中でも今回試した夜の空いているハイウェイがいい。

 車重2.5トンに迫ろうという巨体である。正直、いくらパワーがあっても足りないが、この仕様なら推定310psオーバーとじゅうぶん。トルク特性も素晴らしく、40km・g以上の極太トルクを、扱い易い4000rpm台で発揮する。

 よって高速では本来の速さを遺憾なく発揮する。ピックアップの良さはすでに語った通りだが、そのままどこまでも伸びていく。ターボチャージャーほどの吸い込まれるような加速感はないが、まさに思い通り。どの領域でも扱い易く、この万能感は凄い。

 例え「急いで!」と多少、無茶な注文を出す彼女を乗せたとしても、ある意味スポーツカー顔負けの俊敏性でもって走れる。

 もちろん真の実力を、いつ何時発揮できるかはわからない。だが、男たるもの「いざ鎌倉!」ではないが常に心と体の準備はしておくべきだ。いつもは優しく、しかし時に強くもなれる。それこそがあるべき男の姿ではないだろうか。

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316psのパワーと47.5kg・mのトルクのおかけで、高速道路でも俊敏な加速が味わえる。
高速域でもスーパーチャージャーのノイズはほとんど感じられない。アクセル操作に対してクルマがスッと反応する。
これが心臓となるGTスーパーチャージャーだ。トラクションドライブという遠心式を採用している。