フラッシュエディターは、純正ECUチューニング(書き換え)が簡単に行えるセッティングツール。STEP 7でもテストしましたが、内蔵されたカスタムデータに書き換えるだけで、マフラーやエキマニ、エアクリーナーなどの性能を引き出すことができます。
このフラッシュエディターには、NA用のカスタムデータが2種類内蔵されていますが、今回新たにHKS GTスーパーチャージャー仕様にも対応。スーパーチャージャー専用のカスタムデータを内蔵したことで、取り付け時のECUセッティングが必要なくなったというわけです。これにより、プロショップに限らずディーラーやタイヤショップ、量販店などでもスーパーチャージャーキットの取り付けが可能になりました。
というのもHKS GTスーパーチャージャーキットは、コンピューター(F-CON iS)とセットになった「コンプリートキット」、コンピューター無しの「プロキット」という2種類のラインナップになっています。コンピューターがセットになったコンプリートキットはHKSパワーライター店のみの取り扱いで、プロキットはコンピューターが付属していないため、コンピューターセッティングが可能なプロショップなどでの取り付けが前提となっていたからです。しかし、フラッシュエディターは予めセッティングされたデータが内蔵されていますので、コンピューターセッティングの知識や技術がなくても書き換えが可能になったんです。
フラッシュエディターの使い方は簡単。まずはフラッシュエディター本体をクルマのOBD IIポートに接続し、純正ECUのデータを読み込みます。そして本体をUSBケーブルでパソコン (WindowsXPまたはWindows7)につないでカスタムデータを保存。再び本体をOBD IIに接続してカスタムデータを書き込めば完了です。
では、早速フラッシュエディターを使って純正ECUをリフラッシュ。シャシーダイナモでHKS GTスーパーチャージャー+フラッシュエディターの実力をチェックしてみましょう。
スーパーチャージャーを装着したことでパワーの差は歴然。7000rpm付近では、ノーマルに対して40psものパワーアップを実現しています。
また、グラフを見るとノーマルは3500rpmから4500rpmあたりでパワーの落ち込みが見られます。86に搭載されているFA20エンジンの特性なのですが、スーパーチャージャー仕様は落ち込みが改善されています。これは、フラッシュエディターで制御することでバルブタイミングを最適化しているからです。
ちなみに、このあたりの回転域は街乗りなどで使用する常用回転域ですので、スーパーチャージャー仕様はフラッシュエディターで制御することで、とても乗りやすい特性になったといえます。
GTスーパーチャージャー・コンプリートキットに付属しているF-CON iS(サブコンピューター)とフラッシュエディターを同一条件(気温27℃)で計測、比較したのがこちらのグラフ。低中回転域ではフラッシュエディターが上回っていますが、5000rpm以上はF-CON iSの方が優れた結果となりました。
ピークパワーでは約10ps、F-CON iSの方が上回っていますが、これはフラッシュエディターのデータは、安全マージンを大きくとったセッティングになっているからです。フラッシュエディターのセッティングデータはパワーが出ていないのではなく、安心して乗っていただくために、敢えてパワーを抑えたセッティングとしているわけです。
しかし低中回転域ではフラッシュエディターの方がF-CON iSを上回っています。というのもF-CON iSにはバルブタイミングのコントロール機能がないため、ノーマル同様3500rpmから4500rpm付近でパワーの落ち込みが出てしまうのです。いっぽうフラッシュエディターは、バルブタイミングのコントロールで最適化しているため改善できています。
走りだしてすぐに体感できるのが低回転域のトルク感。2000rpmという低回転からアクセルを踏み込んでもすぐにトルクが立ち上がり、街乗りでよく使う3000rpmあたりもかなり力強くとても乗りやすい特性になっています。もともと排気量は2Lですが、3Lクラスに排気量アップしたようなフィーリングですね。
さらにアクセルを踏み込んでいくと、3000rpmを超えたあたりからトルクがモリモリと出てくるような感じです。トルクのピークは4500rpmを超えたあたり。力強い加速が味わえます。また、ノーマルですと3500rpmから体感できるくらいのパワーの落ち込みがありますが、この仕様ではほとんど感じません。
フラッシュエディターは低中回転域を重視したセッティングデータになっていますが、トップエンドまで回したときの楽しさは極力スポイルすることなく味付けしています。GTスーパーチャージャーとフラッシュエディターの組み合わせは、どなたでも安心して楽しめる仕様になっていますので、チューニングに不安を感じている方には是非体感していただきたいですね。